2021-01-01から1年間の記事一覧

ピエロちゃん(ピアノ)

ピエロちゃんには、大好きなひとがいました。いつも笑っていて、雲の形をずっと覚えていられるひとでした。ピエロちゃんが忘れてしまった雲は、そのひとがピエロちゃんのほっぺたに教えてあげました。ピエロちゃんのほっぺたは変幻機構をそなえていて、その…

握手(ピアノ)

階段を登っていたら、全身白タイツを着た7人のガキ共が、手は繋ぎなよおー!と叫びながら僕を追い抜かし、走り去っていった。僕はショックでしばらくその場から動けず、茫然として立ち止まってしまった。僕の手が、まるで僕の手ではないかのように、誰か遠く…

パンの友達(ピアノ)

今日友達と一言も会話せずに黙ってて、どっちが先に話しだすかなとどきどきしてた。結局どっちも何も話さずに分かれて帰ったけど、そういえばって感じで、友達の名前完全に忘れてることに気づいて、帰りながら愕然とした。最後に友達の名前呼んだのいつだっ…

幼馴染(ピアノ)

昨日部屋のものを全部捨ててしまって、分割払いで衝動的に買ったピカピカのグランドピアノしか部屋に残ってない。壁は特に防音とかではないので、一音をゆっくり弾くくらいのことしか、残念ながらできない。透明な誰かの力で、僕は震える人差し指をピアノ線…

詩『服の記憶を奪われた半透明の全裸人間』

目的地を持たず、浮遊する霊的沈没者達の、虚ろな表情筋が、 未だ壁の中に隠れているはずの同志(存在しない)に、優しく蠢く、 痙攣し、振動する、陰者特有の暗号、無人と友人する唯一の技術、 名前を格納する箱に、名前以外の空気を詰め込んで、冷たく暇を…

詩『美術館の冷たい床』

" data-en-clipboard="true">蜜よ それは知らない反射を言葉にして目の奥を侵す過去の忘れられたかたち " data-en-clipboard="true"> 腕を失ったビーナスの 静かな佇まいを横に盗み見るようにして 僕は美術館の冷たい床に座る 軌道の無い音楽を聴く 風が甘く…

詩『ナシの最良』

生き血降る野原で 重たく担う 距離の現象と時間原始のゴシック 火傷の夢嗅覚は煙の湖に浮きこの世で鳴る 夜の唖然 潜ませた星 精神的座標計算 死人の冷たさ 月から来る記憶 知る身に触れ悲嘆トピア 何も無い机に針をのせ 細長い輝く救済底で響く夜の呆然 過…

詩『空気の玉の細部』

振り子のような運命に手を伸ばす 古い歌の胸騒ぎをおさえて 飛び上がるふたり、四本足の 接近する惑星に降り注ぐ千のレーザー 視線が命を花に変えるように 視線が光に感情を含ませるように 精神を焼き尽くす乱数 戦いは続く、しかし意味不明に けがもせずに …

詩『雨の日』

雨は戦艦の影の形で黒い傘をさして歩き続けた男を褒めて祝いのつもりで熱を奪った 畦道をやすやすと薙ぎ払う朽ちた無限を生む木槌に名前はなくただずっと前からここに落ちていてこの人がそれを拾ったそれだけのこと恐らく、この神話の遺物は色を持たない蛙の…

詩『威容の柱』

冷徹の 重くて軽い 自由の柵に手を添えて「この下が海だ」 あぶくの断面(複雑な熱の混合色)管と肉で膨らむ 力の風船 パンとは割れずただ抜けていく 魂の管を 風が 音たてて閉める ドア 一つ目巨人との戦いで踏み潰された手足を 深い森の 真の影が支配する …

詩『違う場所にいる(異空間の)犬なのか』

犬のしっぽ 取れるよ 取れかかったボタンのようにふらふら揺れてるから 今にも取れることが想像できるよ 現世に心残りがあるみたいに今にも取れそうだ 道に落ちてしまう前に 補強 補強 補強しましょう納得いくまで 頑丈になるように しっぽを肌に縫い付けて…

詩『真空状態のあの世 この世の温度』

裸で走って竜の 翼踏むリズムで 呆然と永遠の夢を見る嘴が戯れに突く霧 はっ 晴れたんだ テクスチャの戸惑い わざとらしい元素の踊りの反復 破壊と再生 押し流されたかたち 炎と雷から産まれた青に 僕はついていくよ 空より好きな熱 死にかけでも走るよ 真実…

詩『「別に…帰るだけだよ」 』

未練の無い過去には食べ物が無い お腹を透かせた向こう岸のマリアに住む 新しいイデア 真っさらな時を吹き飛ばす 架空の子供 「今日はどこに行くの?」 「別に…帰るだけだよ」 いつまでも君と較べられる 食べ飽きた後悔 北海道の積雪 喧嘩した記憶の回想 あ…

詩『余す余すところの四月の反復』

余す余すところの四月の反復エッシャーの絵の中に紛れ込んだ蛙の火の玉 その目の奥に潜むアイス アイス アリスとアリス その次は凍結された円盤を割って出る ニュートン力学の神様の死体 倍に増えていく狂気もいい うるさいほど嬉しいとして 君の狂ったマン…

詩『まるでちぎったキャベツのように』

細い触覚を住宅街に延ばす 首から下が歪んだ象の首 透明な凪の責任を負い あばらぼねを合成して作られた慰めあばらぼねを合成して作られた喉笛あばらぼねを合成して作られた草原 黒い 果物の 喜び 立入禁止の泥沼 泥沼の底 引き裂かれた人間まるでちぎったキ…