詩『夜の木』

彼女が「夜の木」を狩る時 君の途切れた機構が死体に隠された光を争う
旅路の果ての電子牢獄に刻まれた渦巻状の痕跡に従い
拳銃に擬態した全世界がこの夜を訪れるとしても
何も考えられない昏睡状態の昼が覚醒することはない

生命力を無限遠のなかで落としてきてしまったのだろうか
遠近法が逆に働いて遠い家族を光のなかに見るように
君は墓石の隣に立ち 抜け殻となって考えている 
「夜の木」はもう狩られたのだろうか?

地獄の門からこちらの世界に銃弾がゆっくりと入り込み
その先端についた特別な数字を見せる
君しか知らないはずの魂の数字を
魂の鍵で 魂が永遠に口を閉ざすための貝殻(神話)を

もしも君がまだ虹色でいるなら 砂漠の旅は今も続いているのだ 
だが地平線が光源でないなら 君の予想よりも終末は近い
天に氾濫する都市がこちらに向かって超感覚を転送する 時空声母で

過去と未来の空白領域が彼女のために切り取られ 
「夜の木」は退屈の中で狩られてしまった
死体から光が存在の形で暗示され 暗示は瞬時に解釈のなかで殺される
わたしたちの不安が満たされるのはこの一瞬のなかだけだったのに
わたしたちの肉体が年輪を作らず 時の下僕の土となることを好むゆえに

不可能性の思念が渦を巻いて量子ゲートをかい潜る
(君がいるべき場所に 君がいるべき場所に 君がいる)

凋落した君は水色の騎士に何度でも火をつける 火は全ての祈りの向かう先だ
夜は終わらないが木の周囲にだけは光が舞っている
(優しい騎士の献身には誰も気がつかない!)

全世界の引き金が引かれ 円い終末が銃弾となって放たれる
銃弾が貫いたのは昼の太陽だった まだ彼が眠る前の
無限が観念のなかで生きていた頃の 死後の世界がまだあった頃の

天地を漂う平行線が「夜の木」になる 狩られる対象の純粋な骨に
光は彼女の無数の影によって分断され 死はいつまでも勤勉な悪魔の晩餐となる

これが誰も経験したことのない新世紀の世界連鎖だ 
そして新しく生まれた勤勉な悪魔こそが君の次なる光だ 黙々と契約するがいい 

君は君の尾で徴持つ膝を隠さなくてはならない