詩『その輪郭は存在しないと定められている。』

ある特定の条件を満たした、しかるべき場所の風景が、私の見るべき映像だと思う、
そう思うことで、どことも知れない荒涼とした大地が、やっぱり私の故郷だったということになるのだ、
 
雪が降っている、
木が無数に枝分かれしていて、向こう側の景色が光の粒としての異界に堕とされている、
ゴス、ゴス、と雪を踏みしめる足音が響く、その足は存在しない、
殺す、殺す、と獣を憎む目が充血する、その目は存在しない、
大いなるレイアウト、連鎖する自然の道、風の道が、私を未知なる方位へおびき出す、
 
質環と呼ばれる、
輪になって吃る物質たちの言語が、流暢に語られている、その言語は存在しない、
ずっとそこで生きていたと思うのは、私が肉体の範囲を間違えた精神の大きさで歩いてきたからだろうか、
とても小さな、蟻のような体格で、地下鉄を利用してきたからだろうか、
坂を、階段を昇り降りしてきたからだろうか、
あの時、砂の上を必死に走り抜けたのは、間違いだったのだろうか、
 
求めるのは、雄大なる生活を客観的に、ある方向から切り取った際の断面だ、それが、
私の図形であると信じられること、
私の大きさであると信じられること、
私の複雑さであると信じられること、
私の単純さであると信じられること、
そうした水準を断面が満たしているのかどうか、私はそれを知りたい、
 
ある特定の条件を満たした、しかるべき空間の傾斜が、私という存在をなぞる輪郭になる、
その輪郭は存在しないと定められている。