20231207

最悪の代名詞、それは酒。そして人間。人間をやめて、ぬいぐるみの剥き出しの目をした鬼になる。鬼といっても理性のあるタイプじゃあない。つまり人間型の、二足歩行型の、オークではない。俺は動物の、動物鬼になる。真っ赤で、筋肉が隆起してツルッとした光沢で夜の闇の中、汗でぬらりと光る。そんな鬼だ。しなやかさと、鋭く研ぎ澄まされた本能があなたを停止した時間のなかに留めてしまう。俺はその時間のなかに入り、共に留まろうと思う。そして、飽きるほどの停止を味わって、そこから出ると、それまであった人間の都市は全て兵器の熱によって溶解し、蝋燭化してしまっている。俺はその蝋の摩天楼を縄張りとして、霞を食って生きて、霞と恋をして、霞を生んで、霞になる。そうして鬼の霞ができあがるという、そういう寸法だ。俺は霞だ。霞の鬼だ。赤い、血のように赤い、つまり血しぶきの、もはや誰も鬼とは思うまい。誰も、俺を動物とは思うまい。だが、赤い。それだけで、全て許されたような気分になる。やがて夜が来て、俺は凍る。赤い氷の、赤いつららのできあがりだ。つららは朝日に照らされて溶け落ち、尖った先端が俺の喉を突き刺すだろう。つららの下で寝ていたお前が、全て悪いのだ。ごぽごぽと、声にならない叫びを上げながら、こうして死ぬのかと俺は思う。