詩『魔法使いのイヤホン』

あっつあつの、音の名前を重ね着して、僕の、おぼえのない地球の球面の向こう側から、銃銃の魔法のあっ、ぽう音がした。
 
十代の淡いトラウマをなぞるように、ぽうぽうっと、さっきまで手の中にしっかりにぎって持っていた花がくだけた。
 
そら、に青がないとしても、僕は上を向いていた。
 
どこまでもゆける冷たさを維持した物体から、離脱する、誰も泣かなくする精神にぶっかけていた音の歪み、高高音の痛覚。
 
兄のいないところから僕がかなしみすする音を取り出すと、僕がそれを見て泣いてしまった。
泣いた形のままの記憶が、よごれになると聴いて、お湯をそそいだら耳の中だった。
 
としよりの存在しない、いえもたたない土地で、斜め上のてんかいが多すぎて、僕はどこでも転べた。
心狂うまで笑える夜が友達の大丈夫な誰かの頭部だったからだ。
 
消えない放課後の笑い声からの逃亡はいつもば、ばっく、ばっくが心臓に突き刺さるりゅっくさっくの幅広い安心する重り、重り。
いっつもにぶく、殴るような不死身のビートをきざみながら、足の裏を地面で叩いた。
 
ノイズ・弱虫・ストレスウィッチ、虹色のコードが救う。
ノイズ・弱虫・ストレスウィッチ、虹色のコードが救う。
石をもちながら、今日も無言、あなたの横を通り過ぎる。
 
かつてこの世界に存在したイヤホン、喚び出す魔法の食べ物の兄弟、串刺しだらけの世の中の、震える知能の複数の恩恵。
 
おどかされたい気持ちをきっと満たす、嫉妬みたく僕を支配する、とつぜんのおわりのような希望をもたらす不可逆の。
 
なくなくな、もしもし、機械に解釈された音声で、孤独をわっ、奪還わっ、だからもうなくなるな、僕だけができる電話越しの魔法で何かをなくせるか。
 
無数に暮れたクラゲ、時間ぐらい、うしなわれていく何かを、空をつかむうごきで手に入れていくし、愉快なゲームを永遠にくれる、うっ、たのしい世界。
 
取り返しのつかない速度でどんどんと通過する、右耳意味、から左耳意味、へと、まったく別ものに変わりながら、そのなかからまたうまれるっ、あつっ。