『部屋』

部屋にずっといると、部屋のちょっとしたことが怖くなる。虫が怖い。汚れが怖い。暗闇が怖い。鏡が怖い。物が怖い。(食べ物が怖い。(食べ物が腐るのが怖い。(腐ったものが乾くのが怖い。)))水が怖い。ほこりが怖い。

でも、少し外でしばらく過ごしてから帰ってくると、部屋がなんだ、何もかもたいしたことないよ、と思う。部屋が自分のなかで肥大化しているのだ。自分にとっての部屋という存在が、肥えている。

部屋による、威圧。僕は、部屋を生き物だと思っているのかもしれない。僕は部屋という生き物の胃の中にいるのだ。毎日毎日、胃の中で、溶かされないように怯えながら座っていることしかできない。眠るときには布団で身を守れ。溶かされぬように、装備を固めろ。部屋は魔獣だ。

何が部屋だ。部屋のくせに。

掃除しても怖い。片付けても怖い。朝になるのが怖い。部屋には、朝と夜があるね。朝の部屋と、夜の部屋がある。

負けたくないな、部屋に。なあ君、部屋に、勝ちたくないか?部屋を、倒す・・・。

外出(で)よう。この部屋から。この胃の中から。