詩『これは見たことある映画だから』

アツイアツイ、俺だけが、光たちが裏でうなってる、ときに、誰にでも、そうだった、どうかしてる、
日は足を得て消えた、嬉しくなって脳天を向く、劇的なことの始まり、明日どうなるか知ってる、
これは見たことある映画だから、そして気がつく、見たことある映画だったんだ、と、

 

ギリギリと引っ張られる、アツイアツイ、どこかに、重さを司るはずの言葉が死んで、黙ったまま、この一生を本に残す、
数回目の命、連続的な、基本となる首のよだれかけ、途切れた電車は、余韻で魂だって、笑う、食い込む、
君の目の前にいる人が告げる、もう遅い、月を超えて脆い、夜を抜けて、夜を幻にして、ではここは本物の場所ではないのかと錯覚させる、やっぱりそうだったのかと思わせる、
糸に乗せて、心をすりむく、光を抜けて、裏へ回って、そこには何もかもあると思わせる、
死と隣り合わせとか嘘で、上へ、上へ、とだまくらかしや、膝の上へ、まるで本物のようだ、

 

影で笑われた波紋が忘れかけた表情になる、生命の表情、懐かしいうらみやつらみや、その他の生命、
計画に合わない金属音をたてて、これすらも、これすらも超えていくと、鉄の犬小屋で泣く、
愛は記憶だ、記憶は機械だ、
思い出し悟り、会ってゆけよ、星だらけの人の、悪さに手を、のばして、を壊して、とても怖い彼方へ、

 

たぶん回してるんだろう、押してるんだろうと分かりながら、膝を地面に平行にして、
今日はどれだけの遺体が運ばれたのだろう、怖い形が、形を忘れずに、そのままの形で明日を知る、
非形の境界に真実の文字を見る、うっすらと鳥、そしてどうやら人、人の形が、アツイアツイの裏ではつらそうに点滅を繰り返す、
遅い遅い、どこで何を、ここまで運んでくれと、映画の男が再び、を、告げる。