詩『鉄骨城が反射する』

不意に
波の扇が崩れた
蜘蛛が膝に乗る温度で

橋の低空に
光を遊ばせる無数の斜線が射し
緑色の水に白く
城が映る

「鉄骨だ」

偽物の木を撃つしかない昼飯
休むタンクは太く伸び
クレーンの重低音は断続的に
美しくもなく吐かれている

中央塔より巨大な倉庫を鳥が目指す
泣く場所も水の中 死ぬ場所も
通り雨のような野球場を超えている

葉の亀裂が鳥の言語になる
扇はまた消えて 次は無かった

うねることを禁止された徐行兵器が
用意されたままで水を撃つ 
それが ニ発目だった

同じ反射はない
ゆえに同じ鉄骨もないはずの時間
実在に溢れている
しかしそれらは偽物だった

水の無限だけが初めからある
何に従って来たのか
どこからの遣いなのか
開始を問うことの無駄を思う

自然発生的な記憶喪失が
どうしても波撃つしかない
川だけを
傷として憶えている