詩『銀の内側』

靴を履いている私は
靴として動く
重力をもった透明な何かが私の頭とか苦しみの周囲を回っていて
その廻りに従って
感覚が引っ張られ・引っこ抜かれしながら
歩いている

熱の肌の筋肉の義務として
人間と人間の立つ床を支える支柱となった私
だが人間は支柱でなくなったほうがよい
棚に垂直に
整えられた亡霊になる前に

階段は私に手を伸ばし私は女の子の背中を通り抜けて階段貫通する

視点が視点の内で破裂するような
問うということの表情を通る

本当はどうなったっていいという思想に笑い
砲塔はどこに向いてもいいという事実に怯え
放送は「どうしても死にたければ幻惑の中で」
と注ぐ君の後ろにいる人に注ぐ

繰り返される死亡の音に
人の吸うべきだった空気は失われたのだと思う

警戒せよ
あなたの箱が流れてしまわぬように
あなたの子供がねじれた渦状の叫びに泣かぬように
見ていることは見られることだ
遊びや飲み物が無くなるような空白のための寂しさ
失くなることは失くされることだ

風景と別れる服に襲われて
銀の
機械の光る近さに驚く私
私のいたところで死んだ
私だったものが
銀の内側にはげしく吸い込まれていく

車輪が柔らかく撫でる
明日もそこにあるはずの地面を撫でる