『記憶のように空を舞い』

記憶のように空を舞い
川の水面の光をまとって浮かぶもの
ものの大小を守らずに並行の姿で語るもの
かつてぼくは、まぜこぜの自然のなかでも
まっすぐに歩くことができた

ビルの吐き出した風が、海に流れて泡となり
水平線の向こう側で、豊かな重さをもった黒い大陸を夢に見ていた
雲間からのぞく巨大な目の、ぼやけた眼光はそれ自体で存在し
いっときでも太陽のことを忘れさせてくれた

神々の彫像をなでるように、ぼくにさよならする手が何度も
何度も思い出すときには、水面に突き刺す五本指の竿となった

疾走のイメージそのもののように
光の跡が絶え間なく、流れてゆく
まばたきする間に感覚が、ひとつひとつと蘇り
迫り来る死の予感を、岩の膚として表現していた

それを撫でる長い腕がそれを撫でるのを呆然と見ていると
どこまでも沈んでいくぼくに
君が笑いながら気がつく